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飯野和好/イラストレーター、絵本作家。

※2003年のインタビュー記事です。

●福生に住んだきっかけは何だったんですか?

丁度ベトナム戦争が終わり掛けの時、ボクは南阿佐ヶ谷に住んでいたんだけど、たまたま友だちが南林間のハウスに住んでいて、そこはそれなりの高い位の人なんかが住んでたとこらしく庭が広くて家も大ききて、それを見たら住みたくなって、その南林間でハウスを探したんだけど物件がなく、そうしたら週間プレーボーイに福生のハウスが特集されていて、即、福生に探しに行ったら、それはもういくらでもある状態だったね。ただ状態は南林間にあった物とはかなり違ってボロボロだったけど、物色してるうちに今住んでるハウスを見つけて、窓から日が差したりして、なんかココいいなーと思って決めちゃったんだ。ただ前に住んでいたのが兵隊2人だったみたいで、一つの部屋は黄色とか赤とか派手な色で壁なんかがペインティングしてて、もう一つの部屋は普通だったんだけど土足で使ってたから床が汚くて掃除やリフォームが大変だったね。そんなハウスに気が付いたら35年も住んでるよ。

●福生の魅力ってなんでしょうか?

20代の中ごろでヒッピーもどきのイラストレーターで生活をしてて、その柄に福生があってたっていうのがあるね、気楽だったし。ハウスに住んだら住んだで建物自体も気にいっちゃって、それと徐々に仕事の方も増えてきたりして自分の場所になったかな、という感じだったね。気が付くとまわりには学生運動やってるやつがいたり詩人や彫刻家やミュ-ジシャンなんかがゴソゴソ集まってて、結構みんな仲間意識が強く、ハウスを改造してライブハウスを作るやつがいたりするとそれをみんなで作ったり、(今もあるUZUというライブハウス)なんてゆうのが面白かったね。

●福生の思い出に残るエピソードはありますか?

ベトナム戦争がまだ続いてる時だから基地の人間はピリピリしてて、ある時ボロボロの格好してる仲間が線路沿いをフラフラ歩いていたら誰かに通報されMP(基地の中にいる警官隊のようなもの)たちに囲まれてピストルを向けられ映画さながらの体験をしたり、兵隊達と庭なんかでパーティーをするといつも手の付けられない様な感じになってきて恐い思いをしたりとか、死んだ兵隊の幽霊がハウスにでたとか、あと赤いマント売りの話しってのが流行ってね、赤いマントは入りませんか、と男が訪ねてきて、それはなんですか?って聞くとおもむろに中国刀を出して背中を斬り付け、パックリあいた傷から血がふきだし、それが赤いマントだ。と男が言うという話なんだけど、みんな赤いマント売りがくるぞ!って怖がってたね。今考えるとくだらない話だね。(笑)

●福生にあるお勧めのお店を教えて下さい。

石川屋(居酒屋)かな、それとお世話になってるチキンシャック(ライブハウス)とか、あと銀座通りにある薮そばと穂高っていう喫茶店。穂高はタイムスッリプしたかのような内装で、面白いメニューはカレースパゲッティー。スパゲッティーはそれだけです、ってマスターが言うんだよね。(笑)ボクもたまに自分で作ったりして好きだからいいんだけど。あとはミロ画材かな。

●今の福生と昔の福生との違いは何でしょう?

まず景色が全然ちがうね。ボクが来た時、駅はほんとうに小さくて駅前に出ると近くの畑からマカロニウエスタンのように土ボコリがまったりして。それと西友が作り掛けの頃だったなあ。ハウスも沢山あったしね。あとは住んでいた人間がちがうよね。昔はある独特の活気があったな。その活気の源は音楽、そしてロックだったりして、ロックを中心として発信し動いていた感じだったね。今メジャーになってる人達もよくライブやってたしね。これからも若い人達はどんどんエネルギーを外にぶつけていくといいよね。

●最後に飯野さんにとって”福生”とは

かけ出しの頃からやって来た街だからね、ただの田舎の街とは違って基地があったり音楽があったりいろんな仲間がいたりして、いろんな刺激が自分の中に入ってきた街。自分を発酵させてくれた街だね 。

●ありがとうございました!

飯野和好

イラストレーター、絵本作家。
1947年埼玉県秩父生まれ。セツ・モードセミナーで水彩・タブロー・風俗イラストレーションを学ぶ。69年、雑誌「an an」に連載した「きむずかしやのピエロットものがたり」でデビュー。 以来、本の挿画や表紙絵などを数多く手がける。
「小さなスズナ姫シリーズ」で第11回赤い鳥さし絵賞受賞。「ねぎぼうずのあさたろう その一」(福音館書店社)で第49回小学館児童出版文学賞を受賞。
画集に『もじゃもじゃふぁんたじい』があるほか、人形芝居の美術・衣装、絵本セミナーの講師など、多方面に活躍。

また、THE BULE BOWLSというロックバンドのメンバーとしても有名。担当はブルースハープとコーラス。2004年にはBorn & Bone RECORDSよりファ-ストアルバムを発売(レコーディングは福生のチキンシャック)。飯野さんの渋いブルースハープと低音の歌声が最高です。